『鋼の錬金術師』で知られる荒川弘が自らの農業高校での日々をもとに、いろいろ規格外の学生生活を、ガリ弁でへなちょこだった学生・八軒勇吾の目を通して描いています。
これまでに、実写映画やアニメ作品も制作されました。
15歳にして人生に煮詰まった彼
主人公の八軒は、札幌の名門校に通っていた秀才でしたが、高校受験を前に煮詰まり、精神的に壊れそうになったところで北海道のど真ん中にある農業高校に飛び込むのです。
サラリーマン家庭に育った彼には、農家の跡取りが殆どという級友らに囲まれ、折々に衝撃を受ける日々に突入します。
それまでの彼は、自分が何気なく食べていたものがどのようにして自分の口に届いていたのか、そして、その作物を作るために農家がどれほどの苦労をしているのか、ということを初めて知るのです。
点数と受験、大学といった価値観しか持っていなかった彼の人生が根底から覆るような日々の中で、初めて子供らしい素顔をのぞかせたり、また、誘われて入った馬術部で馬に振り回されて己の小ささを知り、少しずつ変わっていくのです。
八軒が本気を出すと…!?
そんな八軒の凄いところは、やはり『賢さ』です。
農業高校では持て余されてしまうかもしれないその知能は、イベントの計画や実行にいかんなく発揮され、自分らが実習で作った作物を使ってピザを作るまつりを主催したり、獣医を目指そうとする同級生に勉強を教えることになり、次第に学校内で自分のポジションを構築していくのです。
最初は何をするのでもおどおどしていた彼が、自信をもって物を言えるようになったときには、胸がすく思いでした。
彼の最大の壁は優秀で高圧的な父親でした。
その意向を受け入れて東大に入った兄に対するコンプレックスもあり、彼らの前では卑屈にならざるを得ない過去がありましたが。
自分が本当にやりたいことを見つけたときに、彼はきちんと意見を言えるようになったり、目をそらさずに済むようになったのです。
頑張れ、『若人』たち!
それでも、八軒は恵まれていました。
彼の周りにいた同級生は、実家の農家が破綻して学校を辞めざるを得なくなった者や、『鳥インフルエンザが発生したら一発でアウトだからなぁ』と言いながらもその実家の養鶏場を継ぐ覚悟をしている者がいました。
その腹の括り具合が、八軒にとっては新鮮で、しかし彼は、それを知ることで罪悪感に近い居心地の悪さを感じていたのです。
最初は、そつなく農業高校を卒業したら、何処かの大学に推薦入学でも、と考えていた八軒でしたが、『自分で事業を起こしたい』と考えるようになりました。
では、そのために今何をするべきなのか。
北の大地で鍛えられた彼は夢を掴もうと奔走しているのです。
その姿は、前途多難なれど、背中を押してあげたい、と思うほどの情熱にあふれているのです。
まとめ
夜明け前から起きだして馬の面倒を見たり、夜中まで家畜の出産に付き合ったり。
テキストだけを相手にしている勉強、そして人間だけを相手にしている生活とは異なり、農業高校の学生の毎日は驚きと衝撃に満ちています。
そこに北海道という土地柄もあいまって、毎回「すげーーーー…」と思うような話が盛り込まれているのです。
将来への不安、甘酸っぱい初恋、友情、普通でない高校生ライフはまだまだ続いており、私は親戚のおばちゃんのような気持で最後まで彼らを見守っていきたい、と思っているのです。
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