マンガ「静かなるドン」は、新田たつおによって実業之日本社から刊行されたアクションコミックになっております。
主人公の近藤静也は、若き日の香川照之から最近では袴田吉彦まで数多くの個性豊かな俳優たちの熱演によって実写化されています。
個性豊かなキャラクターたち
一見すると下着会社のしがないデザイナーでしかない主人公の近藤静也の、他人には決して打ち明けることが出来ない大きな秘密に惹き込まれていきます。
実用化不可能な新製品ばかりをデザインし、遅刻・早退・無断欠勤を繰り返しながらも何故か会社をクビにならないのが笑いを誘います。
静也とは正反対で社内でも優秀かつ美しきチーフデザイナー秋野明美は、この物語のヒロインでもあります。
ライバルの居合切りの達人でもあり屈指の武闘派でもある海腐雄二の登場によって、物語の緊迫感が高まっていきます。
虎視眈々と跡目を狙う最高幹部の生倉新八や静也を極道の世界へと引きずり込んでいく2代目姐の妙などの、内部に響き渡る不協和音も気になってしまいました。
ストーリー紹介(ネタバレなし)
仕事終わりに白いスーツを身に纏いサングラスをかけた途端に、サラリーマンの近藤静也から新鮮組3代目総長へと華麗に変身していきます。
自分自身は真っ当な道のりを歩んでいくことを強く望みながらも、父親の生命を対抗勢力「鬼州組」によって奪われたことによって意外な才能を発揮してしまうのが皮肉な味わいでした。
チャイニーズ・マフィアからシチリア島のゴッドファーザーまで巻き込んだ、世界を股にかけた血を血で洗う抗争が繰り広げられていきます。
愛する人・秋野明美には決して自分自身の正体を明かすことが出来ない静也でしたが、次第に彼女は疑惑を募らせていきます。
対立を深めていく鬼州組に睨みを利かせつつ、プライベートでも重大な決断を迫られることになるのでした。
漫画を読んだ個人的感想
愛する人のためなら大切な仕事や、3代目総長の座でさえも放り出してしまうピュアな一面が微笑ましかったです。
次から次へと迫りくる強敵たちと向き合いつつ、極力無益な争いや無駄な血を流すことのない静也の立ち振る舞いが勇ましかったです。
戦いを好まない従来の性格ながらも、身体の中に流れる一族の血に怯える様子が印象深かったです。
いつもは非常識な言動や粗暴な振る舞いを見せていた構成員たちが、時には隠されている人間らしさによって涙を流す場面にはホロリとさせられます。
野獣のような心の中にも、魅入られるような優しさが秘められていることを感じました。
反社会的勢力に身を置きながらも、奥底からは非情に徹することが出来ないそれぞれの葛藤には胸を打たれました。
まとめ
サラリーマン社会に生きるごく普通の人たちの苦労が、時折極道者の葛藤に重なり合っていくシーンには多くの読者が共感できるはずです。
幕末の偉人たちをモチーフにしたキャラクターも魅力的なので、任侠物が好きな方ばかりではなく歴史に造詣の深い人にもお勧めです。