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小説「帰ってきたヒトラー」は、2014年の120日にティムール・ヴェルメシュによって河出書房新社から刊行された長編文学になっております。

オリヴァー・マスッチを主演に迎えてデヴィッド・ベント監督によって、2016年に実写化されています。

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ストーリー紹介(ネタバレなし)

2011年の830日の午後、66年前に自らの生命を絶ったはずのアドルフ・ヒトラーが突如としてベルリンの空き地で目覚めました。

ナチス政権下で叩き込んだアーリア人種としての誇りからは程遠い若者たちの姿や、平和で浮かれ切った国内に対してヒトラーは怒りを露にします。

たまたま通り掛かったテレビ局プロダクションで働いているヨアヒム・ゼンゼンブリンクは、彼をヒトラーのそっくりさん芸人と勘違いしてコメディー番組に引っ張り出してしまいました。

生放送中のスタジオで披露されたヒトラーの演説は、インターネットを通じて全世界へと拡散していきます。

賛否両論が巻き起こる中でも、次第にヒトラーの一挙手一投足は21世紀に生きる人々を虜にしていくのでした。

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本を読んでみた個人的感想

第二次世界大戦の歴史の中でも絶対的な「悪」とされているアドルフ・ヒトラーが、現代に蘇ってモノマネ芸人としてブレイクしていく展開がブラックユーモアたっぷりでした。

ヒトラーが復活を遂げるオープニングの舞台となるミッテ地区や、居候先のキオスクやトルコ人が経営するクリーニング店までがリアリティー溢れるタッチで描かれていました。

街中でサッカーに興じる少年たちを、ヒトラー・ユーゲントと誤解してしまう場面には笑わされました。

一見すると悪ふざけのイメージが強いストーリーの中にも、戦争の記憶を忘れていく今の時代への鋭いメッセージや批判が込められていました。

誰よりも愛国心に満ちて理想に燃える男が、最後に下した決断に驚かされました。

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特に良かったセリフや言葉

全編を通して満ち溢れている笑いと毒のあるセリフの中でも1番に印象に残っているのは、「ただひとつのアイデアや工夫が、何十万人もの人々に何かを考えさせたりする」という言葉でした。

ヒトラーがYouTubeやブログを使いこなしていくシーンに登場します。

アジテーションの才能が抜群なヒトラーと、ヘイトスピーチや移民排斥運動が過熱化していく今のヨーロッパとの間に不気味な繋がりを感じてしまいました。

ネット社会に潜んでいる危険性を、60年以上前からタイムスリップしてきた独裁者が巧みに利用している様子には思わずゾッとしてしまいました。

寛容性を取り戻すことこそが、過去の過ちを繰り返さないための何よりもの命綱であることが伝わってきました。

まとめ

時代の流れがいつの間にか戦争へと向かっていくような今だからこそ、若い世代の方たちにはお勧めな1冊になります。

アイヒマン裁判やナチスドイツの歴史をテーマにした小説に造詣が深い人にも、読んで頂きたいと思います。

 

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