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小説「工場」は、

2013年の3月30日に小山田浩子によって新潮社から刊行された

短編小説集になっております。

 

1983年広島県出身の小説家によるデビュー作になり、

表題作で2010年度の新潮新人賞に輝いた作品になります。

 

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小説「工場」のストーリー紹介(ネタバレなし)

牛山佳子は失業中にハローワークの求人票で見付けた、

とある海沿いの工場に面接に向かいました。

 

当初の話とは違い、正社員ではなく契約社員としてながらも、

採用が決まって働き初めていきます。

 

大学で分類学の研究に打ち込んでいた古笛は、

教授の推薦によって工場の正社員となります。

 

システムエンジニアとして忙しい日々を送っていた佳子の兄は

突如リストラにあい、

派遣登録会社に勤めている恋人のコネを使って

工場での仕事を手に入れます。

 

工場全体で何を作っているのかさっぱり分からない3人ですが、

いつしか考えることを止めて

盲目的にルーティンワークをこなしていきます。

 

巨大な工場の敷地で牛山佳子と古笛が偶然にも巡り合った時に、

ある事件が起こるのでした。

 

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小説「工場」を読んでみた個人的感想

工場内部を蠢いている無数の従業員たちを、

空から望遠レンズを使って眺めているような

奇妙な気持ちが涌いていきます。

 

住宅街やマンションばかりではなく、

ボーリング場からハンバーガーチェーン店まで併設された工場には

驚かされます。

 

無限に続く迷路のような敷地内で、

ガラパゴス化していく正体不明な黒い鳥たちに圧倒されました。

 

意味不明な数字や記号が書き込まれた書類を

1日中シュレッダーの中に放り込んでいく牛山佳子や、

間仕切りのある部屋で眠気と格闘しながら赤ペンを握りしめて

文章の校正をさせられているの理不尽さが心に残ります。

 

同僚はおろか上司もいないまま延々と屋上緑化を続けていく、

古笛の後ろ姿には一抹の寂しさがありました。

 

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1番に良かったセリフや言葉

随所に散りばめられている不可思議な味わいのあるセリフの中でも

特に印象に残っているのは、

「とりあえず毎日働く場が与えられたことにはほっとした」

という言葉でした。

 

会社であれ学校であれ、コミュニティの中で自分自身の居場所がない孤独感こそが

人間にとって何よりもの恐怖であることを考えさせられました。

 

不条理な職場環境に違和感を覚えながらも

いつしか思考停止して全てを受け入れていく人たちの様子は、

社畜のようでもありロボットのようでもあります。

 

ありとあらゆる企業が人件費を安くするために派遣社員を使い始めていき、

オフィス内での人と人との関わり合いや結び付きが薄れていく

今の時代への鋭い批判やメッセージが込められいました。

 

小説「工場」 まとめ

毎日のオーバーワークにお疲れ気味なサラリーマンの方たちには、

是非とも手に取って頂きたい1冊だと思います。

 

働くことに対して漠然とした不安や疑問を抱いている、

就職活動中の大学生の皆さんにもお勧めになっています。

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