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小説「架空列車」は、2012年の75日に岡本学によって講談社から刊行された長編文学になっております。

理系大学の情報学部で准教授を務める異色の経歴を持つ若手作家が、第55回群像新人文学賞に輝いた作品になります。

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ストーリー紹介(ネタバレなし)

他者とのコミュニケーションが人一倍苦手な「」は、勤め先の会社を退職して1年余りになりますが一向に再就職が決まりません。

都会での慌ただしい暮らしに馴染むことが出来ずに、東北地方にある小さな田舎町のワンルームへと逃げるように引っ越しました。

映画鑑賞にも読書にもまるっきり興味がなく地図を眺めることだけが大好きな性格で、新しい土地でも仕事を見つけることよりも架空の鉄道路線を制作することに熱中していきます。

こまめに敷設予定地へと足を運んで、自転車を走らせながら実際にタイムを計測して綿密に運行状況をリサーチしていきます

自分自身が理想とする列車が完成に近づいてきたある日のこと、東北地方に未曾有の大災害が訪れるのでした。

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本を読んでみた個人的感想

若くして友達にも恋人にも恵まれずやりたいこともなく、息さえしていればいいという主人公の気だるい日常生活の風景には印象深かったです。

定住場所を一切持たない根なし草のような生きざまには、家族や血の繋がりの意味合いが薄れていく今の時代にも重なるものがありました。

自らの人生に絶望して選んだ先の終着駅が、東北の町であったことに運命的なものを感じます。

新天地での穏やかに流れていく時間と広大な自然に包まれた風景の中で、生まれて初めて夢中になれることを見付けた瞬間の主人公の喜ぶ様子が微笑ましかったです。

誰の役にも立たない架空の列車を、ただひたすらに頭の中で走らせ続けていく主人公の熱狂ぶりには鬼気迫るものがありました。

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1番に良かったセリフや言葉

全編を通して哲学的な響きに満ち溢れたメッセージの中でも特に印象に残っているのは、「割り算ばかりしている生活は、文化的ではない」というセリフでした。

僅かばかりの預貯金で、如何にして働くことなく時間を過ごすか想いを巡らす主人公が呟いた言葉になります。

面接先の企業からはまるで必要とされていなかったモラトリアム気味な青年の、唯一無二の特殊能力であり楽しみである路線の製作技術が意外な場面で役に立つところが面白かったです。

他人と面と向かって会話をするのが苦手な主人公が、次第に変わっていく姿が伝わってきました。

虚構の世界を駆け抜けていた列車が、予期せぬ自然災害によって現実の路線と交錯していくクライマックスが圧巻でした。

まとめ

廃線を免れて日本全国をひっそりと走り続けているローカル線を愛してやまない、鉄道マニアの皆さんには是非とも手に取って頂きたいと思います。

列車で旅行に出掛けるのが好きな方たちにも、お勧めな1冊になっています。

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