もともと原作者・海堂尊のファンだっただけに、放送前から注目していたドラマでした。
ドラマだから原作と設定が変更になることは致し方ないのかなと思って見始めたのですが、初回から最終話まで通して観た感想は、
原作をも凌ぐ面白さがあったのではないかな?
と思います。
原作とはちがう、ドラマ版『ブラックペアン』の魅力を紹介します。
主人公が原作と異なる設定も医療ドラマならでは!
原作の主人公は、竹内涼真演じる世良雅志という研修生。
それがドラマでは二宮和也演じる渡海征司郎に変更されたときには、
なるほど、そう来たか!
と思わず笑ってしまいました。
というのは、仮に世良雅志を主人公としてドラマ化してしまうと、
最終回まで勢いが持つかな?
という印象があるからです。
彼自身はどこの医局にもいそうな至って普通の研修生。
それとは対照的に渡海という役は悪魔的な才能を持った天才外科医。
連続ドラマとして観たとき、どちらが医療ドラマとして輝きを放つかは
他局の『ドクターX』を見てもわかる通り、後者のタイプです。
これが連続モノではなく、二時間ドラマや映画なら世良でもよかったのかもしれません。
原作における世良はあくまで、多くの秘密を抱える登場人物たちに振り回される地味な探偵役なのですから。
主役の座を明け渡しても、世良の魅力は健在!
とはいえ、世良の魅力まで抑えられたかといえば、そうではありません。
実直に患者と向き合い、医者としてひたすらに命を救おうとする、でも技術はまだ追いつかない、
そのもどかしさの中で苦しむ姿は、まさに原作から飛び出してきたような印象を受けました。
一方、渡海は原作では秘密を抱えた登場人物の一人という位置づけで登場しますが、天才外科医という設定は原作そのまま。
原作の良いところは抑えつつ、ドラマでしか表現できない部分を見事に演出していると思いました。
天才外科医の腕を持ちながら傲慢な態度を見せる渡海と、ひたすらに医学の発展、医療技術の発展に心血を注ぐ小泉孝太郎演じる高階権太。
そして様々な手段を駆使して理事長の椅子を狙う内野聖陽演じる佐伯清剛。
それぞれの魅力は原作を飛び出しても決して崩れてはいなかったと思います。
視聴者の予想を根底から覆す脅威のどんでん返し!
- レントゲンに写ったペアンの謎。
- 渡海の父親が大学病院を追われた事件の謎。
- 秘密裏に入院させられる謎の患者。
それらの謎が最終回では見事に回収されていった印象です。
ドラマの流れを見ると、渡海の父親が病院を追われたのは、佐伯教授のペアンの置忘れに端を発しているのだろうと視聴者は思い込む。
渡海もそう思い込み、ひたすら佐伯教授に対する復讐心にかられ、執刀の腕を磨いてきた。
それが最後の最後、患者の体からペアンが取り除かれた瞬間、大量の出血、
そして、それは置忘れではなく、止血するにはその方法しかなかった事実が、佐伯の口から騙られ、愕然とする渡海。
そのときの茫然とした表情に僕は二宮の役者魂を感じました。
そして、病に倒れた佐伯を、「戻ってこい!」と叫び続けながら必死になって手術する渡海は、この瞬間、本当の意味で名医になったのだと感じました。
まとめ
医療ドラマ、天才外科医を主人公にしたドラマは過去にも数多くありましたが、
そこに謎解きが加わるのは海堂尊の原作ならではだと思います。
謎解きあり、スリリングな手術シーンあり、そして涙、涙、涙の人間模様には、
さすが天下の日曜劇場だと感心させられました。
原作だと渡海の活躍はこれで終わり。
続編のブレイズメスからは登場しませんが、もし続編が制作されるのであれば、渡海の活躍にも注目していきたいと思いました。