映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」は、
2018年の3月3日に劇場公開されたアシュリング・ウォルシュ監督によるヒューマンドラマになっております。
カナダに実在するひとりのアーティストの生涯と、彼女を支えた夫の実像に迫っていきます。
ストーリー紹介(ネタバレなし)
孤児として生まれ育ったエヴェレットは、カナダ東部の町はずれで廃品回収の仕事や魚の行商を営みながら細々と生計を立てていました。
ある時に幼い頃に患ったリュウマチの影響で身体的なハンディキャップを抱えている、ひとりの女性が求人広告を見て訪ねてきました。
モードはエヴェレットの家に住み込みの家政婦として働くことになり、やがてはふたりは結婚することになります。
ある日のこと、ニューヨークからバカンスでカナダを訪れていたサンドラが、モードが壁の一部に書いた鶏の絵を見て彼女の才能を見出していきます。
サンドラに絵の制作を依頼され、いつしかモードの作品は世界中で評判を集めていく中で、エヴェレットは優しく妻をサポートしていくのでした。
魅力的なふたりの俳優
実在の人物であるモード・ルイスの役を、サリー・ホーキンズが多彩な表情によってアプローチしているのが良かったです。
絵本作家の両親を持ち、イラストレーターの経験もある彼女にはピッタリな役です。
イーサン・ホークが扮しているエヴェレットの、寡黙で無骨な振る舞いの中にも時折見え隠れする優しさには心温まるものがありました。
ひとりで生きてきたエヴェレットと、ハンディキャップを抱えながらも決して屈することのないモードが打ち解けていくシーンにはホロリとさせられました。
貧しくも仲睦まじい夫婦として日々の暮らしを送っていくふたりの姿からは、物質的な豊かさを追い求めていく現代の風潮への鋭い批判やメッセージが込められていました。
映画を見た個人的感想
ふたりが終の棲家に選んだ小さな小屋の、四季折々の景色や穏やかに流れていく時間が美しさ溢れていました。
モードが締めたての大きな鶏を活かしてエヴェレットに食べさせる、チキンシチューが実に美味しそうです。
その一方では自らの手によって生命を奪った鶏の姿を、家の壁のイラストとして残していくシーンが印象深かったです。
美大はおろか初等教育さえも満足に受けてこなかったモードが、多くの人たちを自己流の絵によって惹きつけていくのが面白かったです。
遠近法や色彩感覚といった、常識に捉われていては目に映らないものを見せてくれたような気分になりました。
愛する人と大好きな絵筆によって、生きる喜びに包まれていくモードには胸を打たれました。
まとめ
格式ばった美術館での芸術鑑賞よりも、飾らないフォークアートがお好みな方たちには見て頂きたいと思います。
ターシャ・テューダーやグランマ・モーゼスを始めとする、田舎の生活をテーマにした画家に造詣の深い人にもお勧めです。