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愛でもない青春でもない旅立たない」は、
2005年の920日に講談社から刊行された
前田司郎によって書かれた長編小説です。

舞台演出を手掛けたり
映画「ふきげんな過去」の監督を務めるなど、
幅広いジャンルで活躍する劇作家の
野間文芸新人賞候補作になります。

 

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ストーリー紹介(ネタバレなし)

東京の郊外の、
とある大学に通う22才の「」は、
5年生を迎えた現在でも卒業出来そうにありません

親友の山本と校内を目的もなくさまよい歩いたり、
講義を抜け出して女友達の元宮ユキと遊びに行く毎日です。

恋人のまなみは、
すでに大学の芸術学部を卒業していて、
アルバイトをしながら絵を描いています。

近頃ではデートもマンネリ化して
連絡も途絶えがちになり、
どんどん疎遠になっていきます。

「僕」は、
石を運んで研磨するバイトに夢中になって、
次第に学校へも通わなくなっていきます

職場ではみずからが発案した
画期的なシステムの採用を訴えますが、
正社員たちにはまるで相手にされません。

キャンパスにもバイト先にも
居場所を見つけられないまま、
時間だけが過ぎていくのでした。

 

 

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本を読んでみた個人的感想

主人公のモラトリアム感たっぷりとした
日々の繰り返しには、
味わい深いものがありました。

レポート課題に取り組むことなく
テスト範囲を復習することもなく、
サークルの部屋がアパートのように並んでいる部室棟で
キャッチボールに興じるシーンには笑わされました。

大学に5年も通っているのに、
やりたいことを見つけられない
不甲斐なさが印象深いです。

惰性で続けていた石運びや細工の労働にも
心の奥底からのやりがいを持つことが出来ずにいる、
現場の人たちとの微妙な温度差や距離感が伝わってきました。

ふたりの魅力的な女性の狭間で揺れ動きながらも、
どっち付かずの煮え切らない態度を取ってしまう
今時の草食系男子が微笑ましかったです。

 

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とくによかったセリフや言葉

ユーモアセンスたっぷりとしたセリフが
随所にちりばめられています。

その中でも1番に印象に残っているのは、
歩く僕の時間を世間の時間が追い越している
という言葉でした。

ストーリーの舞台に設定されている
JR山手線の五反田駅周辺の、
慌ただしく移り行く街並みを眺めながら
主人公が感傷に浸る場面に登場します。

アルバイト先で汗水流しながら
運んだり磨き上げた石が
少しずつ積み上がっていき、
いつの間にか巨大なオブジェへと変貌する様子にも
繋がるものがあります。

東京都内で生まれて
五反田で育ちながら
劇団「五反田団」を旗揚げした、
若き日の著者自身の本音も込められていますね。

周囲から置いてきぼりを喰らった主人公が、
最後に見た風景が圧巻でした。

 

まとめ

将来への漠然とした期待と不安でいっぱいな、
若い世代の学生の皆さんにはぜひとも
見て頂きたい1冊だと思います。

退屈な日々の繰り返しにお疲れ気味な人や、
新しいなにかを始めようとしている方たちにも
オススメな作品になっています。

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