映画「ライオンは今夜死ぬ」は、
2018年の1月20日に劇場公開された、
諏訪敦彦監督によるヒューマンドラマです。
国内外で活躍を続けている日本の映画作家と
ヌーヴェル・ヴァーグの申し子の異名を持つ俳優がタッグを組み、
2017年に日仏合作で制作されました。
ストーリー紹介(ネタバレなし)
南フランスの風光明媚なリゾート地コート・ダジュールで、
ベテラン俳優であるジャンは新作のロケに挑んでいました。
作品の中で演じる「死」について
思い悩んでいるうちに、
今は亡き恋人のジュリエットの姿を思い出してしまい
墓前に赤い花を手向けにいきます。
お墓参りの帰りに、
彼女が住んでいた古いお屋敷を訪ねてみると、
ジュリエットが昔と変わらないままの幻影となって
ジャンの前に現れたのです。
さらには、
探検ごっこに興じていた地元の子供たちが迷い込んできて、
映画の撮影が始まっていきます。
ほろ苦い思い出と少年少女たちとの触れあいを通して、
ジャン自身も若き日の輝きを取り戻していきます。
映画が完成に近づくにつれ、
ジュリエットとの別れも迫っていくのでした。
円熟味溢れるベテラン俳優
主人公の老俳優の生きざまが、
そのまま主演のジャン・ピエール・レオに
重なり合っていきました。
1959年に若干15才の時に、
フランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」に
オーディションで大抜擢されます。
フランス国内で1968年に発生した
五月革命やジャン・リュック・ゴダールとのいさかいに翻弄されながら、
一時はイタリアに活動の拠点を置きながらも、
俳優業を続けてくのです。
盟友トリュフォーとの死別によって、
長らく引退状態でしたが、
2011年のアキ・カウリスマキ監督「ル・アーヴルの靴みがき」で
再びスクリーンに舞い戻ってきます。
少年が老いていく様子には
哀愁もありますが、
年齢を重ねることによって生まれてくる
新しい魅力的も感じました。
映画を見た個人的感想
ストーリーの舞台に設定されている、
南仏の風景が美しさ溢れていました。
リュミエール兄弟が
世界最古の映画「列車の到着」を撮影したこの町を、
とぼとぼと歩く主人公ジャンの後ろ姿には、
一抹の寂しさがありました。
ジャンにとって、
思い出の場所である屋敷に設置されている、
メイク・ルームの合わせ鏡が印象深かったです。
この世とあの世を繋いでいく鏡から、
死者との束の間の再会を果たすシーンには、
ホロリとさせられました。
本作品のタイトルにもなっている、
アンリ・サルヴァドール作詞の名曲「ライオンは今夜死ぬ」に
込められているメッセージが感動的です。
時の流れの残酷さを痛感すると共に、
何度でもチャレンジすることができる
人生の素晴らしさが伝わってきました。
まとめ
「ニ十歳の恋」や「ウイークエンド」を始めとする、
若き日のジャン・ピエール・レオに慣れ親しんだ世代には、
ぜひとも鑑賞して頂きたいたい作品だと思います。
大切な人との別れを経験した方たちにも、
オススメな1本です。