「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」は、
2016年の4月23日に劇場公開されたポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督の歴史ドラマになります。
「アンコール!」などの監督作品の他にも俳優として活躍している映画作家によって、2015年にイギリスで制作された作品です。
ストーリー紹介(ネタバレなし)
第二次世界大戦中に600万人のユダヤ人の殺害を指示したアドルフ・アイヒマンが、逃亡先のアルゼンチンで逮捕されました。
身柄をイスラエルへと輸送される中で、アメリカのテレビ局でプロデューサーを務めるミルトン・フルックマンは裁判の生中継を企画します。
優秀なドキュメンタリー映画の制作者として活躍しているレオ・フルヴィッツと共にイスラエルに乗り込み、政府と直接交渉して撮影の許可を取り付けました。
本国のアメリカではガガーリンによる単独宇宙飛行やキューバ危機の報道により、いまいちアイヒマン裁判に注目が集まっていません。
見解の違いから撮影クルーの間にも不協和音が高まっていく中で、前代未聞の裁判は幕を開けていくのでした。
ふたりの俳優の迫真の演技
マーティン・フリーマンが演じている主人公ミルトン・フルックマンの、匿名の手紙を通じての誹謗中傷や家族に対する脅迫電話にも屈することのない意志の強さが魅力的でした。
報道関係者の控え室前で手榴弾を持った襲撃者が大立ち回りを演じるシーンで、警備員顔負けの機転によって間一髪難を逃れる様子が勇ましかったです。
「ラブ・アクチュアリー」などのコメディーのイメージが強い俳優さんの、シリアスな演技が良かったです。
アンソニー・ラパーリア扮する相棒レオ・フルヴィッツとの熱い絆も感じます。
絶望的な裁判が続く中でアイヒマンへの憎しみを募らせていたレオが、妻と息子の思わぬ来訪を受けて本来の優しさを取り戻す場面にはホロリとさせられます。
映画を見た個人的感想
現場のカメラマンでさえも撮影を続けることをためらってしまうほどの、生存者による衝撃的な告白には胸が痛みました。
裁判の間に終始一貫して全身冷血なサイボーグのようだったアドルフ・アイヒマンにも、記録映像を見せることによって人間的な揺らぎが生まれてくるシーンが印象深かったです。
必ずしも歴史の特異な存在である訳ではなく、時代の流れによって第二のアイヒマンが生まれていく危険性について考えさせられました。
自分自身が生き延びるためには他者の生命をあっさりと奪ってしまう、人間的な弱さも伝わってきました。
必ず真実を伝える
という強い意思を抱きながら、過去の過ちへと立ち向かっていくミルトンとその仲間たちには強く心を揺さぶられました。
まとめ
世紀の生中継へと挑んでいくテレビマンたちの仕事ぶりが、それぞれリアリティー溢れるタッチで再現されているのが見所です。
ディレクターやプロデューサーを始めとする報道機関の仕事に興味のある方たちには、是非とも見て頂きたい1本だと思います。