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小説「ビアンカ・オーバースタディ」は、2012年の8月に筒井康隆によって星海社から刊行されたSF文学になっております。

1934年生まれの日本文学界をリードし続けてきた大御所が、ライトノベルにチャレンジした異色の作品になります。

 

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ストーリー紹介(ネタバレなし)

ビアンカ北町は、学園中の男子生徒を虜にしてしまうほどの美しき女子高校生です。

容姿端麗であるばかりではなく、頭脳明晰にしてクラブ活動は生物研究部に所属していました。

 

近頃では放課後になると実験室に籠りきりになり、顧問の工藤先生から与えられたウニの研究に熱中しています。

ビアンカの1年後輩に当たり彼女へ一途な思いを抱き続けている文芸部の塩崎哲也や、3年生の生物研究部員・千原信忠と次第に禁断の実験に手を染めていきます。

 

高校生離れした知識と身体的な特徴を持つ千原と接するうちに、ビアンカは彼が未来からきたタイムトラベラーであることを確信します。

人類の滅亡の危機を救うために、ビアンカとその仲間たちの冒険が始まっていくのでした。

 

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本を読んでみた個人的感想

地球規模での環境破壊や生態系の乱れなどの、今の時代の社会問題を鋭く捉えたストーリー展開には惹き込まれていきました。

二酸化炭素の排出量増加によって温暖化が進んでいき、東京・大阪・名古屋などの海岸に面した都市が水没してしまった近未来の光景には、思わず背筋が凍り付くものを感じました。

 

食料危機へと陥っていく人類が、動物たちの遺伝子情報を組み換えて食用に改変していくシーンには痛烈な批判やメッセージが込められています。

巨大化した実験用のカマキリが研究所から脱走し、人間たちに逆襲の牙を向くバトルシーンが迫力満点です。

最悪の未来の世界が映し出されていく物語からは、現代に生きる我々が何を遺すべきなのか考えさせられました。

 

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特に良かったセリフや言葉

全編を通して味わい深い会話ややり取りの中でも1番に印象に残っているのは、

「歴史に反してまで、人類の滅亡を食いとめようとするのはよくないことだ」

というセリフでした。

 

滅びゆく未来に生きる人々の、諦めとも達観とも受け止められる呟きには忘れ難いものがあります。

人間こそが宇宙に対する絶対的な存在であり地球上の支配者であるという、歴史の過ちや驕り高ぶった思想について痛感しました。

 

無気力化していく未来人たちと、若さに満ち溢れまだ見ぬ世界への憧れを捨て去ることのないヒロインのビアンカ北町とのコントラストが心に残りました。

定められた運命を変えるために、クライマックスでビアンカが決意を固める場面には強く心を揺さぶられました。

 

まとめ

時をかける少女」や「愛のひだりがわ」を始めとする、著者のジュヴナイルに慣れ親しんだ世代にはお勧めします。

古今東西のSF小説やアドベンチャー映画に造詣の深い方たちにも、是非とも手に取って頂きたい1冊だと思います。

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