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『怖い絵』で有名な中野京子さんが、昨年の『怖い絵』展で大ブームを巻き起こした『レディ・ジェーン・グレイの処刑』の絵をモチーフにしてまとめたイギリス王家にまつわる歴史の怖い話が満載の一冊です。

500年以上も繰り返されてきた悲劇や戦争の物語を、絵画を交えて解りやすく分析、解析してくれます。

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お姫様は、決して幸せではなかったのです

子供の頃のおとぎ話では、お姫様や王子様の美しい姿や恋物語が描かれていましたが、実在の彼らは生まれた時から命がけであり、明日をも知れない命を、あるものは精一杯、あるものはただ生かされ、そして殺されていく、という残酷な運命を背負っていたのです。

煌びやかな宝石や、絹のドレスに包まれた肖像画の向こうに隠された当時の世情を、『怖い絵』という視点・フィルターを通して分析するとこんなにも当時の人々の姿がつまびらかにされるのか、というのも新鮮でした。

世界史の教科書には一行出てくるか、どうか、という人物にも数十年の人生があり、その多くはあまり幸せではなかったのです。

数多くの肖像画が示すそんなイギリス王家にまつわるドラマを、中野京子さんのチョイスで一冊にまとめてくれているのが本作です。

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「お姫様」の哀しみと人生

世界中に知られている、イギリス(イングランド)の女王 エリザベス一世と、その姉 メアリー一世は、同じ父親を持ちながら、その母親たちの確執を背負いながら日々「死」を思って綱渡りのような人生を生き抜いてきました。

ことに、エリザベスの母によって宮廷から追い落とされたメアリーはその復讐を誓い、異母妹であるエリザベスを敵視し、同様に放逐するのですが、メアリーは結婚に敗れ、跡取りを得ることが出来ず、その王位をエリザベスに明け渡さざるを得なかった、という哀しい人生でした。

彼女の肖像はその人生の過酷さを表して気難し気であり、女王であっても決して幸せではなかったのだということを如実に表しているのです。

肖像画は、言葉にして残せなかった王族の実情の片鱗を今に伝える、貴重な歴史的資料なのだということを痛感させてくれます。

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そのシーンを切り取って残すように

「写真」が世に出るまでの数百年間。

画家はその目を通してみたものに様々な解釈を加えてを残しました。

王族の肖像画、そして歴史的な事件のシーンなど。

当時を生きていた人々の想いは、無意識の状態でその一枚一枚に残されているのです。

 

この本の後半は第一次世界大戦に至るまでの英国王家を表していますが、この時期になると文献などは増え、より一層克明にその時代をしることができるようになりました。

しかし、そこにある油絵の肖像画は、エモーショナルな部分をぐいぐいと刺激する資料として、今も色鮮やかに私たちの心を打つのです。

今はもう動画やインターネットにとってかわられてしまった文化なのかもしれませんが、数百年の間残された数多くの絵は、今もってなお様々な情報を伴って私たちに多くのことを訴えてきているのです。

まとめ

表紙にある『レディ・ジェーン・グレイの処刑』は、観る者を圧倒する迫力で私たちに情報を与えてくれます。

清らかな彼女がどうして死なねばならなかったのか。

それは文章でつらつらと解説されたものを読むより先に、一瞬で様々なことを伝えてくれるのです。

イギリス王家はその内紛や政争、戦争にもかかわらず、数多くの遺物を現代に残してくれています。

それをエンタティンメントとして鑑賞できる、というのは今が平和な証拠なのかもしれません。

 

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