「この気持ちいったい何語だったらつうじるの?」は、
2009年の9月10日に小林エリカによって理論社から刊行された
ノンフィクション書籍になっております。
詩人の谷川俊太郎からの問いかけに
様々な分野で活躍中のアーティストたちが答える、
「よりみちパン!セ」シリーズの1冊になります。
多才な著者のプロフィール
小林エリカは1978年に
東京で生まれました。
父親はシャーロック・ホームズの研究家として名高い小林司になり、
母親も翻訳家として活躍しています。
2001年に「ネバーソープランド」で小説家としてデビューして、
2014年の「マダム・キュリーと朝食を」では
第151回の芥川賞にノミネートされています。
「東京アナログ化計画」や
「Radium Girls 2011」などのユニットを結成して、
ミュージシャンとしても創作活動を続けています。
マンガ家としても意外な才能を発揮して、
「終わりとはじまり」や「忘れられないの」などの
作品を発表しています。
幅広いジャンルにチャレンジしながら、
原発問題から反戦運動まで
3・11後の世界に対して鋭いメッセージを送り続けています。
本を読んでみた個人的感想
「アーティスト・イン・レジデンス」という、
芸術や文化に関わる前途有望な若者たちを世界各国から招いて
部屋や食事を無料で提供するプログラムには驚かされました。
著者自身もこの制度を利用して、
カナダからフランス、更にはエストニアにまで招かれて
貴重な体験をしていることを感じました。
エストニアの首都タリンでの、
「9・11」のエピソードが感動的です。
アメリカでは高層ビルに飛行機が突っ込んだ
2001年あの日を意味しますが、
エストニアでは1988年の9月11日の独立記念日に当たります。
旧ソビエトの軍事的な圧力に暴力で反撃することなく、
国民の3分の1を越える30万人がエストニアの言語で歌を歌い演説をした
過去の歴史には胸を打たれました。
1番に良かったセリフや言葉
全編を通して優しさ溢れるフレーズの中でも
特に印象に残っているのは、
「広大な砂漠の中から宝石を堀あてたみたい」
というセリフでした。
1000を上回る言語が存在するという地球上でも、
自分にとってピッタリとくる言葉を見つけた時の
著者の無上の喜びが伝わってきました。
大切な人に対して
言葉で自分自身の思いを伝えることの、
難しさについても考えさせられます。
時には家族や友人を傷つけたり、
周りの人たちとの衝突の原因となったりもしてしまいます。
英語ばかりではなくエスペラント語も使いこなす著者だからこそ、
コミュニケーションの複雑さを痛感しているはずです。
新しい言葉によって異文化への扉を開いていく生きざまには
胸を打たれました。
「この気持ち いったい何語だったらつうじるの?」まとめ
旅行や出張で海外に行く機会が多い方たちや留学を考えている人には、
是非とも手に取って頂きたい作品だと思います。
クラスメイトとの会話や友人との関係性について思い悩んでいる、
若い世代にもお勧めになっています。