最近は手作り品を売るサイトが流行っていますが、それは売る人の買う人の趣味が一致しているということが前提です。
需要と供給のバランスどころか、暇に開かせて作った手芸品などを一方的にプレゼントしてくださるのはどうしたものかといつも悩みます。
そこにはあなたのために一生懸命作った物という圧倒的な善意があり、それを拒否するのはとても心苦しい辛いことでもあるのです。
季節の押し絵を配って歩く母
私の母の例ですが、昔から手先が器用で花嫁修業で通った洋裁学校でも優秀な成績だったのが自慢だったのですが、60才を過ぎてはまったのがちりめんと厚紙を使って作る布絵アート「押し絵」。
季節の花やお正月の干支、おひな様や武者人形のような季節の行事などがテーマです。
ご近所でお孫さんが生まれたと聞けば、お祝いと一緒に押し絵の短冊とそれを飾る短冊用の額を送ります。
メッセージカードと思えば押し絵も良いですが、額まで贈られると「飾ってね」のプレッシャーがかかります。
和室すらないアパート暮らしで短冊は飾らないでしょう。
でも母は本気なのです。額がある限り作品を送り続けられるのですから。
春には桜、夏になると朝顔やひまわり。
せっせと作って配り歩きます。
高齢の友達の中には本当に喜んで玄関などに飾ってくださる方もいらっしゃったので、母はさらに張り切って創作活動にいそしんだのです。
趣味のインテリアに合わないのが辛い
母は娘2人には特にどんどん押し絵をプレゼントしてくれます。
季節の花をモチーフにした短冊だけではなく、息子の初節句には色紙で兜と鯉のぼりの押し絵、クリスマスにはサンタさんの押し絵、ちょっと大作っぽい作品は額まで装丁して持ってきます。
我が家はアジアンっぽいインテリアだったので作品によっては合わないこともなかったのですが、短冊や額縁に入った童の絵はどうにも飾る気になれず、実家から距離があるのをいいことに、母が来るときはとってつけたように飾りましたが普段は外していました。
母と仲が悪かったとか、作品が下手だったとかではありません。
インテリアの趣味がわなかっただけなのです。
でももしかしたら自分の趣味を良かれと思って押しつけてくることに、抵抗の気持ちが強くなっていたのかもしれません。
悪気なく一生懸命作っている母は善人そのもので逆らえないのです。
手作り品の価値は作っている時間
趣味で手芸をされている方はたくさんいらっしゃいます。
一時期、アクリル毛糸で編んだたわしが流行ったときはいくつもいただいたものです。
色を合わせて可愛く編んだものから家にあった余り毛糸をただ編んだものまで。
でも、どれだけ便利でも可愛くても食器洗いのスポンジは自分の好きな物を使いたいものです。
手芸や工芸が好きな方は、材料を選んだりデザインを感揚げる時間も楽しいと思います。
作っているときは無心になれます。
ちょっと疲れても完成を想像して頑張れます。
お楽しみの時間はあなたの物、ですができあがった物を万人が好むとは思わない方が無難です。
快心の作なら手作りサイトで売ったり、バザーに出すのもいいかもしれません。
必要とされる人がいる場所で売れた方が嬉しいですし、もし売れないなら反省点も見えます。
プレゼントは役に立ちそうな物やその方の好みにあわせた物を贈るのが良いのですが、わからなければ消耗品を贈った方が喜ばれます。
まとめ
アンケートによると手作りのマフラーを喜ぶ男性は思ったよりも少ないそうです。
手作りの思いが重すぎるという笑えない理由もあるようです。
価値観も多様化している時代に手作りが最高に良い物というのは幻かもしれません。
母の作品の数々は今や形見になってしまいましたが、お気に入りの屏風仕立ての物だけを残して、あとは好きだと言って下さる方に引き取っていただきました。
あくまで個人的な意見ですが、押し入れの奥にしまっておくより愛でて下さる方に渡せて良かったと思います。