不潔な男性社員がいました。
当然仕事もできませんでしたが。何よりも困るのは動物園並みの匂いと、垢じみたスーツ
(一張羅だったらしくて、クリーニングもできず、だんだん形が崩れて表面がテカテカしてきました…)。
ビジネスマナー云々言う前の段階の話で客先にも出せないけど、一緒に仕事をするのも苦痛な人でした。
動物園みたいな臭いがする、というのは差別でしょうか?
その彼は、経済的に困窮している実家のために仕送りをしていて、
自分のために使うお金が殆どない
という噂ではありましたが。
どうも、持っているスーツは一着だけで、ワイシャツも襟が擦り切れており、
ちょっとその格好で客先に行くのはまずいよ、というレベルになってきました。
一張羅のスーツはだんだん劣化してきて、それに伴い、汗とウールの醸したような臭いに、本人の体臭がまざり、何とも言えない『動物園のような臭い』が漂い始め、
女性だけでなく、男性も『ちょっと、これはいくら何でも酷いでしょ!?』というようになってきたのです。
スメル・ハラスメントという言葉がまだない時代のことではありましたが。
毎日そんな臭いが漂い始めて問題になってきました。
しかし、彼をかばう人がいて『それは差別だ!』と言い始めて労働争議になりかけたのです。
その手でパソコンや電話を触るのやめて欲しい!
そうこうするうちに、いろんな感覚がマヒしてきたのか、
彼の髪はぼさぼさになり、フケが浮き、口臭も悪化してきたのです。
今思えば、精神的にいろいろ問題を抱えていたのかもしれませんが、当時は許せない気持ちでいっぱいでした。
ある時、彼はファイルを開き、文書を見ながら、爪で歯の表面をカリカリと削るような仕草をしていました。
磨いていない歯の表面が気になったのか、爪でひっかくようにして、さらにその指先をなめていたのです。
…その手で、内線電話の受話器を取り、ボタンを押していました…パソコンのキーボードも触っていました。
さすがに、我慢の限界を突破し、オフィスの取りまとめをしていたお局のお姉さまに女子社員一同から申し入れをして、
なんとか対応してもらえないでしょうか、とお願いしました。
そういう生理的な感覚はきっと変わらない
周囲の9割が『それはアウトだ』と思うような衛生状態でも、気にならない人がいるんだな、というのがショックでした。
そして、それを指摘すると人権問題になってしまう可能性がある、というのも面倒な話だと。
会社に入るとき、あるいは就活のときにはすでに『相手に対して不快に感じさせるような服装や身嗜みはアウト!』というのは常識だと思い込んでいたのですが。
入ってからはもう、ある意味無法地帯になる可能性もあるんだな、と彼を見ていて思いました。
その後、私はほどなく異動してしまったので、最終的に彼がどうなったかは分かりませんが。
メンタルをいろいろとこじらせると、人間は自らがああいう臭いを発していても気にしなくなってしまうのだなという、凄いものを見てしまった、という気持ちでいっぱいになりました。
まとめ
最近のスメル・ハラスメントでは柔軟剤の香りが強すぎてトラブルになる、という話がありましたが。
動物園の、特にバッファローあたりとタメを張るレベルの悪臭を放つ生き物がオフィスにいる、というのは生理的に無理過ぎて本当に泣きそうになりました。
『彼がそうなるには同情すべき余地と、理由がある』ということを言い、かばう上司もいましたが。
それとこれとは話が別。
ただ風呂に入って頭と顔を洗い、歯を磨き、洗濯したものを着て会社に来い、という現代の日本人にとって至極真っ当な、不文律というほどでもないルールが守れない人種がいる、
ということが何よりも衝撃だったのです。